2014年4月6日日曜日

性善説の限界

以前から注目していたニュースに進展がありましたので、ご紹介を。


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アトピー用クリーム処方の横浜・都筑区の山口医院、「無免許医」と陳謝

カナロコ by 神奈川新聞 4月5日(土)0時2分配信
 横浜市都筑区の山口医院(山口了三院長)が最も効力の強いステロイド成分を含む塗り薬を「ステロイドを含まない漢方クリーム」としてアトピー患者に処方していた問題で、同院は4日、医師として処方していた中国籍の女性(52)に医師免許がなかったことを説明、陳謝した。製造元とされていた「中国天津市の工場」についても、存在が確認できないという。患者からは「医院にも責任がある」との声が相次いでいる。

 山口院長(69)は同日、同区内で患者向けの説明会を開き、「われわれの不手際で大変申し訳ない」と陳謝。これまでの診療費を弁済する方針を示した。一方、同院は「女性が漢方と偽って意図的にステロイドを混入した」と判断し、詐欺容疑を視野に女性の告訴を検討している。

 同院によると、塗り薬は2種類あり、十数年前からともに1個(5グラム)4千円で処方され、保険の適用外だった。2013年の1年間に購入した患者は約1600人に上るという。

 山口院長は、20年前に自身の兄の紹介で女性と知り合ったと説明。「北京大学教授」「雲南省名誉市民」などと紹介され、「優秀な医師」と思い込んで十数年前に採用したが、これらの経歴についても確認が取れないという。女性とその親族に年間計約2800万円の給与を支払っていた。

 同院によると、女性は塗り薬について「実家にあった古文書のレシピを参考に作った」と山口院長に説明。チベットで採集した「黄連(おうれん)」や「黄柏(おうばく)」など、数種類の漢方が配合されていると紹介したというが、3月に同院が依頼した専門機関の調査で、いずれの成分も含まれていないことが分かった。山口院長は「薬の発注は全て(女性に)任せていた」と釈明した。

 消費者庁によると、含まれていたステロイドは「プロピオン酸クロベタゾール」で、5段階の分類で最も強力な成分。同庁は「皮膚萎縮や緑内障などの副作用が懸念される」と注意を呼び掛けている。13年9月から「塗り薬が効き過ぎる」といった患者の相談が横浜市に寄せられ、市はことし1月、広告を削除するよう行政指導した。

 医院は女性に説明会への出席を求めたが、書面で「出席する義務も意向もない」と拒まれ、所在も確認できないという。
◇◇◇
 横浜市都筑区で山口医院が開いた説明会には、約600人収容の会場にあふれるほどの患者が全国各地から詰め掛けた。「裏切られた」「許せない」。つらい症状を抱え、わらにもすがる思いで同院を信じていた患者らはショックを受け、激しい怒りの声を上げた。

 「効果のある薬を探しに探して、ようやく見つけた病院だったのに…」。同市戸塚区の主婦(27)は一昨年、ステロイドを使っていないという触れ込みをインターネットで見て、通院を始めた。薬を塗ると1回で症状が良くなり、あまりの効果にステロイド入りかと半信半疑になった。だが、処方した女性の返答は「入っていない」。精神的にも安定していただけに、反動は大きく、「信じていたのにショック。納得がいかない」と涙ながらに話した。

 「腹が立つ」。川崎市宮前区の主婦(34)は3歳の息子が生まれて間もないころから使い続けていた。使うのをやめると逆にアトピーの症状がひどくなり、ステロイド入りを疑いもしたが、頼り続けるしかなかった。東京都板橋区の男性会社員(35)も1歳半の息子に使っており、副作用の心配が募る。「今後、子どもに何かあったらと思うと、怒りが込み上げてくる」と憤った。

 「副作用」を感じながらも使い続けるしかなかった患者もいる。横浜市都筑区の50代の主婦は、徐々に皮膚の質感が変わり、患部をぶつけるとすぐに内出血するようになった。それでもかゆみを取り除こうと、使い続けた。「この薬がないとかゆくて、かゆくて…」

 同市中区の男性(33)は「医院は女性に責任をなすりつけている。山口院長の説明は納得できない」。知人にも勧めたという九州に住む女性(50)は「紹介した以上、私にも説明責任がある。医院はしっかりと説明してほしい」と語気を強めた。
最終更新:4月5日(土)0時2分
 
 
 
 ちなみに文中4000円/5gで販売されていたステロイドは、薬価ですと162.5円/5gです(保険が効くので実際は1/3以下になります)約25倍の値段設定です。
中々の荒稼ぎですね。ここまでいいかげんだとかえって清々しさすら感じるのは自分だけでしょうか?
 
ここで個人的に気になるのは2点。
「院内調剤への警鐘」「ステロイドバッシング再来の危機」です。
 
 
「院内調剤への警鐘」
もちろん大多数の医療機関においては適正に処方⇒調剤が院内において実施されていると思いますが、こういった悪意を持ったケースをチェックする事が出来ないのも事実です。
今回の事件も完全院外調剤が定着していれば防げたのではないか、と薬剤師的には思ってしまいます。
ちなみにこの事件、薬剤師なら誰もが知っている神聖ローマ皇帝 フリードリッヒ2世が医者に毒殺されるのを危惧して医薬分業が始まった。という歴史のストーリーを思い出させます。
 
 
「ステロイドバッシング再来の危機」
1990年代からマスコミなどによりステロイドの過度の副作用報道により生じた脱ステロイド信仰は、「アトピービジネス」と言われるほどに民間療法などが横行し、治療の混乱期を生じました。
今回の一件で再び「ステロイドは怖い薬」という印象だけが先行するのが懸念されます。
ステロイド自体は正しく使用すれば非常に効果的な薬剤です。自己判断で使用量・使用回数を減らしたりして重篤化するケースが再び現れてしまう事を、薬剤師として、またいちアトピー患者としても非常に憂慮しております。
 
 
さて、この事件、再発防止・信頼回復にどのように業界が動くのかが今後の注目点になりそうです。
(大輪 武司)

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