2013年2月5日火曜日

SF作品

20××年 某月
ダイリン 太郎は憂鬱な朝を迎えていた。
2~3日前から鼻水が出ていたが、今朝起きると喉が痛く、ややだるい。熱もある

早速スマホを取り出した太郎は、「どこでも病院」のアプリを立ち上げる。
厚生労働省公式のアプリだ。

まずは国民全員に振り分けられている「マイナンバー」でログインする。
過去の病歴や体質、処方歴や加入保険もサーバー上に記録されているので、面倒な登録は初回のみだ。

デフォルメ化されたドクターの指示に従い、慣れた手つきでチャートに答えていく。

脈拍や体温、呼吸音もスマホを使って計測し、最後に自分で写した喉や目の写真を送ると、すぐに診断結果が出された。
「感冒による急性咽頭炎の可能性:85%」だ。

この診断を信頼する、という項目に「YES」と承諾すると、
その診断への電子処方箋が発行される。

太郎はいつも利用している大手の調剤薬局へそのままメールを送る。

メールが届いた大手調剤薬局では、
即座に「調剤くん」と呼ばれるロボットがメールの処方箋に基づいて次々薬を取り揃えていく。
次に「監査くん」が画像処理技術を駆使して、
薬が間違っていなかったかをチェックする。

そうして調剤された薬は、1日に5便ある定期配送業者により、
太郎の自宅に直接届く。

太郎は大手調剤薬局からの「薬の飲み方メール」を読みながら、
家から一歩も出ることなく薬を飲み、再び床につくのであった。
(大輪 武司)


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