2015年8月20日木曜日

道路と法律と医療と技術と未来と

お盆休みも終わり、ここいらでは二学期のスタートも今週からです。
楽しい夏休みも終わりに近づき、残暑の中残った宿題を片付ける子供たちのほほえましい(?)姿が目に浮かびます。



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さて、先日池袋駅にて医師の運転する車が暴走し、歩行者をなぎ倒して薬剤師が犠牲になるという痛ましい事件がありました。
その後の報道で薬物乱用ではなかったようですが、てんかんの持病があったとの事で波紋を呼んでいます。


このニュースの中で気になった事として、改正道路交通法の存在があります。
昨年の6月1日より施行になった同法ですが、ちゃんと確認してみると、
その中で『一定の病気に係る運転者対策』という要綱が新設されていました。
それによりますと・・・

■免許を受けようとする者等に対する質問等に関する規定の整備
 公安委員会は、免許の取得・免許証の更新をしようとする方に対して、病気の症状に関する必要な質問ができるようになります。
虚偽の記載・報告をした場合1年以下の懲役または30万円以下の罰金

■一定の病気等に該当する方を診察した医師による診察結果の届出に関する規定の整備
 医師は、一定の病気等に該当する方を診察し、その方が運転免許を持っていると知ったときは、その診察結果を公安委員会に届け出ることができます。

■一定の病気に該当する疑いがある方に対する免許効力の停止に関する規定の整備
 公安委員会は、一定の病気等にかかっていると疑われる方の免許を3か月を超えない範囲内で期間を定めて停止することができます。

■一定の病気に該当することを理由として免許を取り消された場合の再取得に係る試験の一部免除に関する規定の整備
 一定の病気に該当すること等を理由に免許を取り消された場合、取消しから3年以内であれば、再取得時の運転免許試験(適性試験は除く)は免除されます。


それでは一定の病気とは?と言いますと・・・


・ 統合失調症
・ てんかん
・ 再発性の失神
・ 無自覚性の低血糖症
・ そううつ病
・ 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
・ その他自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作の
いずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気
・ 認知症
また、これらの一定の病気に
・ アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒
を加えたものを「一定の病気等」と総称します。


そうしますと今回のケースにおいては、容疑者はてんかんの持病に対し、虚偽の報告をして免許を取得したものとして、罰則が適用されることになるでしょう(30万円?)
また、容疑者の主治医に関しては診察結果の届出は任意であるため、特に罰則の適用はなさそうです。
ただ、医療のプロである容疑者が持病や今回の改正道交法について知らないわけがなく、社会的責任がさらに追及される事になるのではないでしょうか。



さて、話の方向性が変わりますが、今回の改正について「一定の病気」という疾患で定義されている所が薬剤師的に気になります。
ということは、薬剤による副作用等で意識障害を生じ、暴走事故などを起こした場合はどうなるのでしょうか?

実はこんな判決も出ています(H27.8.17)

 タクシーを運転中に持病の薬の副作用で意識1を失って、歩道の男性をはねて重傷を負わせたとして自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)に問われた元タクシー運転手の古賀久善被告(71)に対し、福岡地裁は17日、無罪(求刑・禁錮1年4月)の判決を言い渡した。潮海二郎裁判官は「体調の異変から気を失うまでの間は一瞬」として、運転中止は困難だったと判断した。
   
 争点は、古賀被告がめまいを覚えてから意識喪失までに運転を中止できたかどうかだった。検察側は「意識を失うまでに数秒あり、十分な時間があった」と主張していた。
 判決は、ドライブレコーダーの記録などから「頭が熱くなり、そのまま気を失った」という古賀被告の供述の信用性を認めた。これまでに薬による意識1障害もなく、予見可能性も認めなかった。
 判決によると、古賀被告は2014年10月、福岡市博多区をタクシーで時速約30キロで走行中に意識を喪失。清掃作業をしていた50代男性をはね骨盤骨折などの重傷を負わせた。
 福岡地検は「判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントした。
リンク⇒http://mainichi.jp/select/news/20150818k0000m040043000c.html




こうなると、被害者の矛先は薬を出した処方医や、その薬を調剤した薬剤師に向けられる可能性があります。
副作用として意識障害や眠気を生ずる薬剤は市販薬も含め山のようにあります。そしてその薬剤の情報を提供するのは薬剤師の役目です。責任のウェイトは重いと言わざるをえません。

だからといって裁判対策の為だけのテクニック的な手法。例えば副作用が羅列された文書だけを渡す。と言ったのも考えようです。
患者さんが副作用によって不幸な事故を起こさないよう配慮する姿勢。そういった意識が必要なのではないでしょうか。


また、特に地方においては医療関係者とはいえそう簡単に車を取り上げるわけにもいきません。
公共交通機関がない集落などではまさに死活問題となります。
自分もたまに、対向車が来るたびブレーキをかけ、ヨロヨロ運転する恐ろしい老人の車を目にしたりもします。
この問題は医療の他、社会的な側面を併せ持っています。
解決の方法として浮かぶのは、全自動運転自動車の普及くらいでしょうか?


未来の技術に期待したいものです。



(大輪 武司)


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